
Image by: FASHIONSNAP

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開幕から約1週間を迎え、連日熱戦が続くFIFAワールドカップ2026(以下、W杯)。ピッチ上で繰り広げられる熾烈な戦いの一方で、今大会は選手たちのアウトフィットにも注目が集まっている。ここ数年、ユニフォームを私服に取り入れるスタイルとして脚光を浴びた「ブロークコア(Blokecore)」は、いまや一過性のトレンドを超え、定番のファッションジャンルとして定着。W杯に沸く街中では、お気に入りのユニフォームを日常着として楽しむ人々の姿が当たり前の光景となった。日本代表のユニフォームは例年通り「アディダス(adidas)」が手掛けているが、一歩世界に目を向けると、そこにはブランド同士によるもう一つの激しい「サプライヤー競争」が広がっていた。今大会のピッチを彩る、最新の勢力図を紐解く。
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3大巨頭のアディダス、ナイキ、プーマ

※編集部調べ
Image by: FASHIONSNAP
今大会に出場する全48ヶ国のうち、アディダスが14ヶ国、「ナイキ(NIKE)」が12ヶ国、「プーマ(PUMA)」が11ヶ国をサポート。この3大ブランドだけで全体の約8割を占める「三つ巴」の構図となっている。特筆すべきは、前回大会との比較だ。前回はナイキが13ヶ国で首位に立ち、アディダス(7ヶ国)、プーマ(6ヶ国)と続いていた。しかし今大会、出場国数が32ヶ国から48ヶ国と1.5倍に拡大したタイミングを捉えたアディダスとプーマがシェアを大きく伸ばす結果となった。





アディダスが手掛けた日本代表のアウェイユニフォーム
Image by: アディダス
この「3大巨頭」とも言える3社の戦略に目を向けると、ユニフォームを日常のワードローブとして届けるための明確なアプローチが見えてくる。首位のアディダスは、ストリートで定評のある「アディダス オリジナルス(adidas Originals)」のアイコンである三つ葉の「トレフォイルロゴ」をW杯の舞台で約30年ぶりに復刻。各国のアウェイユニフォームの胸元に配し、ピッチ外でも馴染みやすい高いファッション性を打ち出した。対するナイキは、ストリートカルチャーとの親和性が高い「ジョーダンブランド(Jordan Brand)」をピッチに投入。同ブランド史上初となるサッカーユニフォームとして、ブラジル代表のアウェイモデルを手掛け、新しい試みとして注目を集めている。
群雄割拠を彩る個性派ブランド
一方で、かつて存在感を示していた老舗ブランドの撤退も、勢力図の変動を感じさせる。前回大会まで参戦していた「ヒュンメル(Hummel)」や「ニューバランス(New Balance)」が姿を消した一方で、今大会は新たなブランドがピッチに加わり、参加数は過去20年で最多を記録している。
たとえば、スペイン発祥で現在はアジアを拠点に急成長する「ケルメ(KELME)」は、悲願の初出場を果たしたヨルダンと、10年ぶり2度目の切符を掴んだボスニア?ヘルツェゴビナの2ヶ国をサポート。また、自国代表のユニフォームをウズベキスタンのブランドである「セーブル(7Saber)」が手掛けるなど、地元のアイデンティティを背負ったローカルブランドが、世界の晴れ舞台で存在感を示している。なお、ケルメを中国のスポーツメーカーが買収していること、プーマの筆頭株主が中国のスポーツ大手のアンタになることを踏まえて、日経新聞は48ヶ国のうち27%のユニフォームに中国資本が入っているとも報道している。

ウズベキスタン代表のホームユニフォーム。ひらがなの「て」のようにも見えるロゴはブランド名の「7」を元にしたデザイン。
Image by: Scott Taetsch - FIFA via Getty Images
新興ブランドが手掛けた中で特に話題となったのが、半世紀ぶりに大舞台へ帰ってきたハイチ代表のユニフォームをめぐるストーリーだ。コロンビアのブランド「サエタ(Saeta)」が制作した当初のデザインには、独立を勝ち取った兵士たちが国旗を掲げる力強いグラフィックが描かれていた。国家の誇りと愛国心を表現したものだったが、FIFAはこれを「第二次ハイチ独立戦争の『ヴェルティエールの戦い』を想起させる政治的なメッセージ」と判断。デザインの変更命令が下され、ハイチ代表はピッチに立つ直前に新たなユニフォームへの変更を余儀なくされた。


ハイチ代表の変更前のユニフォーム。右裾にグラフィックが施されている。
Image by: Leonardo Fernandez via Getty Images
世界的な大会におけるユニフォームは単なるスポーツウェアにとどまらず、ブランドのマーケティング戦略やファッショントレンド、さらにはその国が持つ歴史的?文化的な背景までを内包したプロダクトであると言える。選手たちの胸元にあるロゴやデザインを観察することは、ピッチの外に広がる社会情勢や各国のアイデンティティを理解する一つの手がかりにもなる。

15日のオランダ戦で同点ゴールを決めた小川航基選手
Image by: Alex Pantling - FIFA via Getty Images
グループFに属する日本代表は、初戦のオランダ戦をドローで終え、来る21日にはチュニジア戦、26日には5対1でチュニジアを制したスウェーデンとの試合が控えている。決勝トーナメント進出をかけた日本代表の勝負の行方を見守りつつ、スタジアムのカメラが選手たちを捉えるときは、ぜひその胸元にも目を向けてみてほしい。「トレフォイル」か、「スウッシュ」か、「ピューマ」か、あるいはそれ以外か。芝生の上で繰り広げられる、ブランド同士の戦いからも、目が離せない。
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