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「ロク」が描く現在地 マスブランドとのコラボがもたらしたもの

Image by: FASHIONSNAP

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 ブランドのスタートからまもなく10年目を迎える「ロク(rokh)」は、デビューから2年でLVMHプライズの特別賞を受賞し、翌年からパリファッションウィークに参加、「H&M」や「ジーユー(GU)」とのコラボレーションなど、順調に拡大してきた。ブランドは現在、発表方法を含め、新たなフェーズへの移行の真っ只中にあるという。韓国で開催したエキシビション型ポップアップ「Rokh Aoyama Exhibition」を東京で行うために来日したデザイナーのロック?ファン(Rok Hwang)に、ブランドの現在地と今の世の中との関わり方、マスブランドとのコラボが与えた影響を聞いた。

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10周年に向け、「新章」へ

──デビューから今まで、アワード受賞やパリコレ参加、グローバルブランドやマスファッションのコラボプロジェクトなどさまざまな動きがありました。外からは非常に順調に見えますが、困難に感じたことはなんでしょうか?

 ほぼ毎日がチャレンジですよ(笑)。どのデザイナーにとっても、すべてのクリエイティビティが挑戦で、日々壁にぶつかっていると言えます。ただ、私たちは、ファッションクリエイティブを探究し続け、新しい意味を見つけることを「楽しいチャレンジ」だと感じています。

──ファーストコレクションを発表してから、8年が経ちました。今ブランドはどのようなフェーズにあると考えていますか?

 ファッション業界だけでなく世界も大きく変わりました。設立当初にやりたかったことは、自分たちのクリエイティビティをしっかりと示すことでしたが、同時に進化し続けたいという思いもあった。その過程を踏まえて、私たちは「第二フェーズ」へと向かっています。このフェーズでは顧客やオーディエンスと、ブランドが持つ価値観、体験をいかに共有できるかを模索する必要があります。

 一方で、クリエイティブももちろん重要です。購入だけでなく、ロクの服を見て、感じる体験も含めたカスタマーエクスペリエンスと相互作用するような形で、よりブランドをコンセプチュアルなものへと進化させていきたいと考えています。

「ロク」デザイナー ロック?ファン

──コミュニケーション方法も模索中。

 それも挑戦の一つです。ファッション業界を取り巻く環境が変わったことの一つに、人々がどのようにファッションを楽しむかの概念も変化したと思う。私はというと、とてもクラシックな人間なので、ショーのような古典的でドラマチックな方法の力を信じています。ただ、世の中全体で見れば、特に新世代の子たちはファッションの見方や感じ方が違うのだろうなと。

 だからこそ、そうした人たちにも届ける方法を探すことはチャレンジでもあり、クラシックな人間からすると少し葛藤もあります。今、新たに取り組んでいるのが、彼らと出会い、体験を提供することなんです。

──2019年からパリファッションウィークの公式スケジュールに継続して参加していましたが、この2シーズンは休止していました。それも新しいフェーズに向けたものだったのでしょうか。

 まさに、そのような理由からでした。ショーには瞬発的なエネルギーがあり、大きな経験になりますが、今のオーディエンスの集中力は数分、あるいはSNSで切り取られた数十秒しか続かないかもしれません。私は元々、タイムレスな衣服を届けたいと思っていて、それはじっくり、長く楽しんでもらうことなのですが、今のショーを取り巻く状況との乖離を感じたのです。自分たちに合う形で、オーディエンスと真に意味のある繋がりを見つけなければいけないと。

 将来的にはまたショーを行いたいですが、クリエイティブの新章を描くような、意味のある移行にエネルギーを使いたい。それでショーを休んで、シーズンのヴィジュアルやECサイトのデザイン、ディスプレイの世界観など、よりオーディエンスに近い部分のディレクションに目を向けるようになりました。

H&MやGUとのコラボがもたらしたもの

──H&MやGUといったマスファッションのブランドとのコラボは、オーディエンスとの繋がり、より広いユーザーとの出会いという意味でも意義深かったのではないでしょうか。

 かなり前向きな変化をもたらしてくれました。2つのプロジェクトを通じて、私たちのデザインは、これまでより遥かに大きなスケールで広がりのあるものだと知ることができましたから。今までは、特定の審美眼を持っていたり、ファッションを特別なものと考えている人たちのためにデザインしていました。それもまたブランドのあり方として正しいのだと思いますが、コラボの経験から、自分たちの可能性を大いに広げてもらったと思っています。普段のテリトリーを超えた「私たちの地図上」にはなかった国々の人々が、それを着たり、さまざまな形で自分たちのスタイルに落とし込んでいる姿を見て、たくさんの刺激を得ました。

──ロクのクリエイティブにも影響しましたか。

 自分たちの世界観を特定の層に向けて特化する必要はないのだという視点を与えてくれました。それはファッション性を落とすといったことではありません。そもそも持っているアイデンティティが、もっと広く受け入れられる可能性があり、だからこそ広い視野でデザインに挑戦してみたらいいんだと。

 そしてデザインの幅広さは、プライスレンジの拡大にも繋がります。元々のロクらしいアーティスティックなピースは残しながら、楽しんでもらえるようなデザインと価格も考えるようになりました。

デニムアイテムは従来よりも手頃な価格に抑えた

ファッションを“作る喜び”

──ファッション業界で二極化が進む中、独立したデザイナーズブランドが存続することは難しい時代でもあります。ロックさんがファッションを“作る喜び”はどこにありますか。

 これはとても重要な問いですね。ただのひとりのファッション愛好家でオーディエンスでもある自分にとっても、ファッション業界はある意味飽和状態にあると感じています。そして私は、それほど若いデザイナーでもないので、こうした大きな流れに疲れてしまうこともあります。

 それでも私が喜びと情熱を感じる源は、ただ作り続けることが好きだということに尽きます。制作で時々あまりにもコンセプチュアルになりすぎることがありますが、最終的に、私が好きなものや自分の審美眼をキュレーションするように整えていく。そのプロセスほど楽しいものはありません。そうやって私が生み出したものが知らない誰かの人生に溶け込んでいくことが、とても意義深く感じるのです。それが私にとってのファッションを通じたコミュニケーションなんだろうと思います。

──ちなみに、ご自身がファッションに突き動かされた経験は覚えていますか?

 私は昔、歴史的な衣服のコレクターで、それがファッションを始めた理由のひとつでした。あるとき、蚤の市のようなマーケットで古いタキシードを見つけたんです。手作業で縫製されていて、汚れや少しずれがあったりするのですが、でもその佇まいがとても美しかった。古くてもタイムレスな美しさを持った服がとてもかっこいいと思ったのを覚えています。特に、あまりファッション性が高くないような都市のガレージセールを漁ってみると、意外と面白いものが出てくるんです。

──ブランドロゴの「0000-0000」は、まさに製造年を空白化したタイムレスな衣服を表すものですね。

 このロゴは、ヴィンテージの服に製造年が書かれていたことを参考にしました。いつ作られたかは関係なく、いつでも、いつまでも着ていいというメッセージです。

コレクションではアイデンティティを広げるフェーズ

──今回のポップアップでラインナップしている、2026年春夏コレクションはどのように作り上げましたか。

 最近の制作方針は少し変わってきています。以前は、よりシネマティックなストーリーや世界観の構築に比重を置いていましたが、近年はもっとアーティザナルでクラフトを重視したものへと進化しています。いつも通り実験的なドレープや裁断、人体とファッションの試作としてのアプローチは変わりませんが、今自分が好きなさまざまなものをジャズのように、フリースタイルで組み合わせて作っていきました。それから、コンセプチュアルでありながら、着る人が自信を持ち快適さを感じるような仕立ても意識しました。

──ロクらしい解体?再構築を落とし込んだアイテムの他に、ウェアラブルなカットソーやボトムスが目立ちます。

 そこが重要なポイントです。ただし、元々のコンセプトが薄まるような見せ方は避けたいと思いました。構築的なシルエットでも、手触りが柔らかい素材を使ったり、一見すると着方が決まっているようなアイテムも変形して着用できたり、自分たちが持つアイデンティティの表現の幅を広げたという感じでしょうか。

──エキシビション形式のポップアップはソウルで開催し、今回東京にやってきました。こうしたリアルなイベントが、ショーに代わる新しいコミュニケーションの形ということでしょうか。

 現時点ではイエス、という感じでしょうか。まさに今、私たちは移行期なので、これから別の方法が見つかるかもしれません。ただ、今回のような形式は、ブランドの全体像、コンセプトを伝えながら、より多くの人が同時にハッピーになる方法の一つだと思っています。トルソーはショーピースのようなドラマティカルなルックを着せていますが、それだけではなく、日常使いしやすいジャージー素材のアイテムやスウェット、デニムアイテムもあります。また、従来よりも価格を抑えた商品も増やしました。

──書籍やBGMもロクさんがディレクションしたと伺いました。

 書籍は恵比寿にある大好きな書店「POST」さんに協力いただき、私が好きなものを集めていただきました。音楽も心地よいジャズで、服を選ぶ時間を映画のように演出してくれる素敵な曲を、「バング&オルフセン(Bang & Olufsen)」のスピーカーから流しています。展示空間全体でロクの制作プロセスを伝えたかったので、アイコニックなトレンチコートはアーカイヴの型を新たな素材で再構築したものをディスプレイとして紹介し、型紙をインスタレーションのように展示しています。

メゾンからディレクターのオファーが来たら?

──ブランドの今後の目標や夢を聞かせてください。

 ブランドが新しい意味を見つけていくという意味で、どんな個性を持ちうるか、改めて考えているところなので、それを形にするのが今の目標です。コミュニケーション面でも、方法を模索している最中ですが、「ロクのユニバース」——服だけではなく、どんな言語を持ち、どんな香り、ストーリーがあるかということを、リラックした気持ちで楽しめるような空間を作るのが夢です。単なるショップではなく、もっと芸術的で高揚感を与えられるようなものを考えています。

──7年前のインタビューで「メゾンからのオファーがあれば、タイミングが合えば考えたい」とおっしゃっていました。ブランドの基盤が固まった今、同じようなオファーが来たらどうしますか?

 今でもその気持ちは変わりません。ただ、やはり私が今最も集中し、責任を負うべきなのはロクなんです。スタッフだけでなく、ブランドを愛してくれる人たちに対する責任がありますから。この間にも素晴らしいオファーをいくつか断ってしまったのですが、それでも人生は一度きりですから、いつかは挑戦したいです。


photography: Kazuki Ono

最終更新日:

??Rokh Aoyama Exhibition
開催期間:2026年6月10日(水)?15日(月)
営業時間:12:00?20:00
会場:LIGHT BOX STUDIO
所在地:東京都港区南青山 5-16-7

FASHIONSNAP 編集記者

平原麻菜実

Manami Hirahara

埼玉県出身。横浜国立大学教育人間科学部人間文化課程卒業後、レコオーランドに入社。国内若手ブランド、国内メーカー、百貨店などの担当を経て、2020年にビューティチームの立ち上げに携わる。ポッドキャストやシューティング、海外コスメレビュー、フレグランス、トップ取材など幅広い観点でファッションとビューティの親和性を探る企画を進行。2025年9月より再びファッションチームに所属。映画、お笑い、ドラマ、K-POP......エンタメ中毒で万年寝不足気味。ラジオはANN派。

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