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アメリカ?ロサンゼルス発のセルフケアブランド「フラミンゴ?エステート(Flamingo Estate)」は、創業者のリチャード?クリスチャンセン(Richard Christiansen)とアーロン?ハーヴェイ(Aaron Harvey)が暮らすロサンゼルスの広大な庭園から2020年に誕生した。「植物に使えないものは、肌にも使わない」というコンセプトのもと、自然本来の魅力を詰め込んだキャンドルやボディケア、パントリーアイテムを展開している。実は、度重なる来日経験から深いインスピレーションを受けているという創業者の2人。単なるセルフケアの枠を超えた、五感を揺さぶるモノづくりの哲学とは。
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リチャード?クリスチャンセン(左):オーストラリアで養蜂家の両親のもとに生まれる。アメリカに移住後、クリエイティブエージェンシー「Chandelier」を設立し、数多くのブランドの戦略立案やクリエイティブディレクション、キャンペーン企画を手掛ける。2020年にフラミンゴ?エステートを創業。
アーロン?ハーヴェイ(右):アメリカ?ロサンゼルス生まれ。NFTマーケットプレイスを展開するDapper Labsや「オフ-ホワイト?(OFF-WHITE?)」でディレクターを務めた経歴を持つ。フラミンゴ?エステート設立時から、ブランディング、キャンペーン、パッケージデザインを含む、全てのクリエイティブディレクションを指揮している。
「私たちは、母なる自然のクリエイティブディレクター」
?? まずはフラミンゴ?エステートというブランドについて、教えてください。
リチャード:フラミンゴ?エステートは、僕たちが実際に暮らしている家の名前なんだ。丘の上に建つピンク色の自宅が、フラミンゴのように見えることからそう呼んでいて、そこから名付けた。ブランドの核となるのは、この家に広がる庭と果樹園、そしてキッチン。マーケティングのための作り話ではなく、物理的に「本物の場所」があることがブランドの強みだと考えているよ。

リチャードとアーロンが暮らすロサンゼルスの家。8500坪の敷地を有する
Image by: Flamingo Estate
?? ブランドを始めたきっかけは?
リチャード:2020年ごろ、コロナ禍でレストランが次々と閉鎖されて、販路を一気に失ったロサンゼルスの女性農家と出会ったのがきっかけ。農場を手放す寸前まで追い詰められていた彼女の姿を見て、「助けなければ」と強く思って。私自身、子どもの頃に両親が農場を失っているので、他人事には思えなかった。
そこでアーロンが箱をデザインし、彼女の野菜を詰め合わせたボックスを販売することにしたんだ。最初は12箱ほど販売できれば十分と考えていたけど、初週に100箱、翌週には300箱、さらにその翌週には600箱と、想像をはるかに超えるペースで注文が入ったんだ。
?? 野菜からキャンドルやソープへ、それはどうして?
リチャード:一般的なブランドは「キャンドルを作りたい、では何が必要か」という順序で考えるよね。僕たちは逆だった。農家の方々から「セージやラベンダーがたくさん採れたんだけど、何かつくれないか」と声をかけられるところから始まる。素材が先にあって、プロダクトが生まれる。今では125以上の農家と一緒に製品をつくっている。私たちは「マザーネイチャー(母なる自然)」のクリエイティブディレクターだと思っているよ。自然の恵みを引き出して、届ける役割だね。


ソープブリック(340g 8800円~)銀座の和光本店地階アーツアンドカルチャーで販売
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?? 農家と組むことで、プロダクトの幅も変わりますよね。
リチャード:農業は季節によって何が起きるか予測できないよね。だからプロダクトは常に変化しているよ。何かが花を咲かせれば「では新しいものをつくろう」となる。バニラ入りのオリーブオイル、ガーリックオリーブオイル、フェンネルのハチミツ...これほど絶えずプロダクトが生まれ続けるブランドは、なかなかないんじゃないかな。それがフラミンゴ?エステートの面白さでもあると思う。

フラミンゴ?エステートで販売しているハチミツとオリーブオイル
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?? キャンドルの香りも、庭への回帰がテーマになっていますね。
リチャード:ブランド創業当時の市場は、甘くて可愛らしい香りのキャンドルであふれていた。僕たちがつくりたかったのは、もっと土に近いもの。庭に立ったとき、風に乗ってくるありのままの香り。トマト、セージ、ローズマリーなど庭で育てている植物の香りをそのままに、製品をつくっているんだ。
アーロン:僕自身、ジャスミンもロサンゼルスを代表する香りとして、大好きな香りのひとつ。ロサンゼルスで活躍した映画監督のデヴィッド?リンチ(David Lynch)は、墓石に「Night Blooming Jasmine」という言葉を刻んでいて、ジャスミンの香りが死者を目覚めさせると信じていたほど。僕たちも香りを特定の場所や記憶と結びつけることに強く惹かれているんだ。

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理念は「この地球を、出合った時よりも美しく」
?? ブランドの理念や成分へのこだわりについて教えてください。
リチャード:実は自宅の庭には、日本のお風呂文化に着想したバスハウスがあるんだ。そこで使用した水が庭に流れる仕組みになっているんだけど、以前使っていたボディウォッシュが原因で、大切に育てていたバラが枯れてしまって…。
そこで、「植物に使えないものを、なぜ自分の肌につけるのか?」と気づいたんだ。それ以来、この問いがすべての製品開発の出発点になっている。ボディケア、スキンケア、来年発売予定のフレグランスまで一貫して、私たちの信条は、「この地球を、出合った時よりも美しい状態にして残すべきだ」ということなんだ。


バスハウス
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?? その他に、プロダクトをつくる際に大切にしていることはありますか?
アーロン:香りが、ちゃんとその場所へ連れていってくれるかどうかだね。

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?? というと?
アーロン:トマトの香りを試した瞬間、庭に立っている感覚がなければいけないと思っているんだ。香りがひとつの物語として機能しているか、それを常に問い続けているよ。パッケージや細部へのこだわりも同じで、箱を開ける瞬間からフラミンゴ?エステートの世界に招かれるような体験が生まれるか、それを大切にしているんだ。
リチャード:私は農家のみなさんの“物語”に惹かれる。その人の生き方や土地への向き合い方を聞いただけで、香りを試す前からその素材に恋をしてしまうことがある。だからその“物語”を、製品を通して伝えられるように意識しているよ。
僕自身は、食や味覚への関心が強く、香りの感性はアーロンのほうが鋭い。大切なのは、お互いの得意な領域を活かし、リスペクトし合うこと。それこそが、僕たちが2人でブランドを手掛けている意義だと思っているよ。
?? 2人の間で意見がぶつかることもある?
アーロン:最も意見が割れるのはスピードの問題だね。リチャードはとにかく速く、たくさんのことを動かしたい。僕はひとつのことをじっくり丁寧に仕上げたい。大体僕が勝つので対立とは言えないけど(笑)、この違いがあるからこそ、量も質も両立できていると思っているよ。

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日本とフラミンゴ?エステートが共鳴する理由
?? 日本には何度も訪れているとか?
リチャード:2人で何度も来ていて、本当に大好きな国。だから日本でフラミンゴ?エステートを販売することは、僕たちの長年の夢だったんだよ。
アーロン:日本には、好きなブランドや物事のストーリーを深く掘り下げようとする文化があるよね。フラミンゴ?エステートには、プロダクトや協業する農家さんごとに多くの物語がある。きっと理解してもらえると確信しているよ。ロサンゼルスもハリウッドやディズニーに象徴される「物語の街」。物語に耳を傾けるこの国と、深いところで通じ合えると信じているんだ。
?? 最初に日本を訪れたときから、日本が変わったと思うこと、一方で変わらないと感じることはありますか?
リチャード:変わらないのは、この国の人々の品格と親切さだね。初めて訪れたときから、誰もが持つ優しさと礼儀に驚かされたよ。それは今も変わっていないと思う。変わったのは、むしろ僕自身の見方かもしれないね。日本の人々がアメリカのブランドに向ける、深い好奇心と敬意に気づくようになった。アメリカでは少し雑然としているブランドも、日本では最も洗練された形で表現されている。それを目にするたびに、いつも新鮮に感じるよ。
TOPICS:来日中にカメラに収められた写真たち
2人が来日中に撮影した日本。日本人には当たり前の風景も彼ら2人には違った“景色”に見える。

?? 日本の文化から影響も受けますか?
リチャード:日本のお風呂文化に深く共鳴して、毎日お風呂に入っているよ。お風呂はただ体を洗う個人的な行為ではなく、温泉などで共同体をつくる場所でもあって。その視点を知ったことで、ソープというプロダクトの持つ意味が広がったと思うよ。
もうひとつ、忘れられない気づきがあって。日本では果物を贈るとき、デリケートな皮の果物を丁寧に包んで届けるよね。今のアメリカでは、トランプ大統領の時代を反映するように、「タフであることが1番」という価値観が広がっている…。でも私は、傷つきやすさもまた、生きてきた証だと思っているんだ。輸送中に傷ついてしまった桃や梅は、販売されず廃棄されてしまうことがあるよね。でも細さや柔らかさを持つものを、私たちはもっと大切にすべきだよね。人間も同じだと思う。日本の食への向き合い方が、そのことを教えてくれたんだ。
日本の農家の「小さく丁寧に」の考えに共感
?? 以前、日本の名産品を集めたコレクションボックスを販売していました。どのようにしてアイテムを見つけたのですか?
リチャード:コレクションボックスは、特定の国や地域に赴き、農家の方々と直接出会い、一緒にプロダクトをつくり、そして3ヶ月間だけ販売するという取り組み。これまで日本、ハワイ、ブータン、メキシコで実施したよ。
日本では、最初に訪れた沖縄での経験が特に印象的だったんだ。世界中どこの農家でも「5000個つくりたい」と伝えると喜ばれる。ところが沖縄の農家さんは違った。「5000は無理。50個つくる。それ以上は興味がない」とはっきり言われたんだ。規模を大きくすることよりも、小さく丁寧であることを選ぶ。私たちのものづくりへの考え方を変えてくれた。「大きく派手に」ではなく「小さく誠実に」を大切にすべきだと。
?? 日本で好きな場所は?
リチャード:麻布台ヒルズの地下にある「麻布台ヒルズ マーケット」。チーズやオリーブオイルとか、素晴らしいものをつくる人々が集まっていると思う。私にとって豊かさとは、「五感を最大限に働かせること」。あそこはすべてが美味しく、良い香りに満ちて、まさに理想の場所なんだ。長い歴史を持つ農産物と、現代的なパッケージやヴィジョンが交差する感覚も良い。古くからの農家と新しいやり方で協業するフラミンゴ?エステートと、どこか似ていると思う。日本に来るときは、いつも空のスーツケースを持参して、食べ物でいっぱいにして帰るんだよ(笑)。
アーロン:僕は買い物が好きだから、ヴィンテージショップだね。空いた時間があると必ず行くよ。日本に来るたびに新しいショップに出合うから、行きたいショップリストが増えていく一方で…。いつか日本に住みたいくらいだね(笑)。

豊かな生活を送るためのヒントは「毎日お風呂に入ること」(リチャード)、「スローダウンすること」(アーロン)
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?? フラミンゴ?エステートに取り入れたい日本の植物はありますか?
リチャード:何年も前に屋久杉のオイルを香ったことがあるんだけど、これまで体験した中で最高の香りだったんだ。落ちた枝からしかオイルを採れないから、入手が非常に難しい。あのオイルをもう一度手に入れることが夢で、ずっと探し続けているんだよ。いつかボディケアやフレグランスに使いたいね。
?? 日本の人たちに、フラミンゴ?エステートをどう届けたいですか?
アーロン:フラミンゴ?エステートはパッケージのエンボス加工や箱の内側と、細部にまで強くこだわっているんだ。品質の違いは、常にディテールに宿る。それは時に、誰も気づかないような部分なんだけど。パッケージだけでなく、原材料も同じ。安価につくることはできるけど、私たちはそうしない。そういった見えないところにこそ、日本の人々は価値を見出してくれると信じているよ。
リチャード:ブランドのすべてを一度に理解してもらおうとは思っていないよ。まずはオリーブオイルでも、ソープでも、キャンドルでもいい。何かひとつ好きなものを見つけてもらって、そこからゆっくりと、ブランドの魅力を探っていってほしい。
100年先まで続くブランドへ、時間をかけ育てていきたい
?? グローバルでのさらなる展開は考えていますか。
アーロン:今はアメリカ、オーストラリア、日本の3つの場所で十分だと思っているよ。2人の出身地と、私たちにいつもインスピレーションをくれる日本。
リチャード:フラミンゴ?エステートは、100年先まで続くブランドでありたいと思っているんだ。歴史を積み上げる時間はまだまだこれから続く。今は焦らず、時間をかけて育てたい。日本は、その大切な一章なんだ。

ロサンゼルスから手持ちしたフラミンゴ?エステートのサンプル
Image by: Aaron Harvey
?? 最後に、ブランドとして、そして個人としての夢を教えてください。
リチャード:ブランドとしては、正しい方法でものづくりをしながら世界をより良くすることと、大きなビジネスを築くことは両立できるということを証明したいね。個人としては、私の好きな言葉でもある「熟す(ripen)」こと。歳を重ね、シワが増え、古いトマトのようになっていく。その過程を楽しみながら、すべてのものを味わい、感じ続けたいと思っているよ。
アーロン:この6年間でのブランドの成長は、想像を超えるものだった。この成長を維持していきたい。個人としても、リチャードと同じように、人として成長しながら“熟していきたい”ね。
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