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来日したコルボNYC創業者に聞く、オンライン時代における“人が集う場所”の可能性

聞き手&文?菅原まい

 ニューヨークのローワー?イースト?サイドで、音楽、コーヒー、アート、ファッションを横断しながら独自のコミュニティを育んできた「コルボ NYC(Colbo NYC)」。今年6月には、海外初となる常設店舗をエストネーション六本木ヒルズ店内にオープンした。

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 オンラインで何でも手に入る時代に、なぜ人はリアルな場所を求めるのか。なぜ今、コミュニティが価値を持つのか。来日した共同創設者兼クリエイティブディレクターのタル?シルバースタイン(Tal Silberstein)に、コルボが目指すコミュニティの在り方や日本市場への期待を聞いた。

カルチャーの起点はいつも“人が集う場所”

??2021年にコルボNYCをオープン。それまでのキャリアについて教えてください。

 音楽やアート、ファッション、フードなど、さまざまな分野を行き来してきました。イスラエルのテルアビブで育ち、若い頃はアジアやオーストラリアを旅しながら過ごしました。その後、ニューヨークの芸術大学スクール?オブ?ヴィジュアル?アーツで絵画を学び、卒業後はレコード収集の趣味の延長としてテルアビブでレコードショップを経営。同時にDJとして活動したり、飲食業にも携わっていました。その後ニューヨークへ戻り、ブルックリンの音楽?飲食複合施設「パブリック?レコーズ(Public Records)」の立ち上げに参加しました。

 そうした経験を重ねるなかで気づいたのは、人は音楽だけ、ファッションだけで生きているわけではないということでした。レコードショップに来る人が服の話をし、レストランでアーティストと出会い、DJブースの横で新しいブランドのアイデアが生まれる。カルチャーは本来もっと曖昧で、境界線のないものなんです。それに気づいてから、そうした異なるカルチャーや人々が自然に交わる場所を、自分自身の手でつくりたいと思うようになって。その考えを形にしたのが、アパレル、インテリア、音楽、食を横断したセレクトショップ「コルボNYC」です。「Colbo」はヘブライ語で「その中にあるすべて」を意味します。本来は別々に存在するものが自然に混ざり合い、人々の創造性や文化を育むための土壌となるような場所にしたい。そんな思いを込めて名付けました。

??人々が集まることが難しかったコロナ禍にあえて“人が集う場所”を作ったのはなぜですか?

 むしろコロナ禍だったことが後押しになりました。人と会ったり、同じ空間で時間を過ごしたりできない状況が続いたからこそ、いずれ人は再び集まることを求めるようになるはずだと予想していたんです。パンデミックによって、人と直接会ったり同じ空間で時間を共有したりする機会が失われたからこそ、その状況が落ち着いたとき、人が再び集える場所の価値はこれまで以上に大きくなると考えていました。同時に、多くの店舗が閉店し市場には大きな空白が生まれていたので、物件も見つけやすい時期でもあった。リスクはありながらも大きな可能性を感じ、このタイミングでスタートしました。

コルボNYC外観

Image by: Colbo

——出店地にローワー?イースト?サイドを選んだ理由は?

 最初は本当に直感でした。ただ、後から振り返ると、この街以外は考えられなかった気もします。ローワー?イースト?サイドには、ユダヤ系移民によるアパレル産業の歴史があったり、中華街やリトルイタリーがあったりと、多様な文化やコミュニティが交差してきました。その背景は、ファッションや音楽、食を横断するコルボの考え方ともどこか重なるものがあります。私たちがオープンした当時も、このエリアには小さなレストランやバー、ショップが点在し、アーティストやミュージシャン、ファッション関係者など、多様なクリエイターたちが集まっていました。少し粗削りで雑多でありながら、同時に洗練されてもいる。その独特の空気は、とてもニューヨークらしいと思います。

 ただ、この土地を直感的に良いと感じた一番の理由は、街そのものに人がつながる文化が根付いていたから。さまざまな場所から集まった人々が出会い、交流し、そのなかから新しいカルチャーが生まれていく。そして、それがまた次の世代へと受け継がれていく。ローワー?イースト?サイドには、そんな自然なサイクルがありました。誰かのサードプレイスとなるような場所の創出を目標としていた僕たちにとってこの環境はとても魅力的だったので、この地にオープンを決めました。

——近年、 ニューヨークやロサンゼルスを中心にコミュニティを内包した店が増えています。 人々はコミュニティに何を求めているのでしょうか。

 人々が求めているのは、自分と近い価値観や感性を持つ人たちと自然につながれる場所だと思います。単に商品を購入するだけではなく、そこに流れる文化や思想、共有できる体験に惹かれているのではないでしょうか。

 オンラインストアやSNSの普及によって、欲しいものや情報は簡単に手に入る時代になりました。その一方で、人と直接顔を合わせたり、偶然の出会いから新しい関係性が生まれたりする機会は以前より少なくなっています。だからこそ今、人々はモノそのものではなく、その先にある体験やつながりを求めているのだと思います。コーヒーを飲みながら会話をしたり、音楽や服をきっかけに交流したりするなかで、新しいアイデアや関係性が生まれていく。そうした有機的な出会いこそ、オンラインでは代替できないものです。もちろん、そうした場をつくり、維持していくのは簡単ではありません。特にニューヨークは物価が恐ろしいほど高いですからね。でも、人と人とのつながりから文化は生まれると信じているからこそ、僕たちはコミュニティを育て続けたいと思っています。

コルボNYCで開催したイベントの様子

Image by: Colbo

——コルボNYCはアーストーンで統一された店内のカラーパレットが印象的です。アイテムをセレクトする際のこだわりを教えてください。

 僕が特に重視しているのは、生地感です。少しシワ感があったり、素材そのものの風合いが感じられたり、オーバーサイズで自然体に着ることができるものを選ぶことが多いです。ロゴや装飾で強く主張するというより、素材や質感、着心地そのものが個性になるような服に魅力を感じるんです。

——では、新しく扱うブランドを選ぶ際はどこに着目していますか?

 長年ファッションに携わる中で培われた直感を信じる部分が大きいですね。ただ、それ以上に重要なのが、そのブランドやデザイナーとの関係性です。服だけでなく、価値観やカルチャーを共有できる相手かどうかを重視しています。コペンハーゲン発の「アナザー アスペクト(Another Aspect)」やアムステルダム発の「カミエル フォートヘンス(CAMIEL FORTGENS)」、ロンドン発の「カウリー(Cawley)」など、コルボNYCで取り扱うブランドの多くとは、単なるビジネスパートナーではなく、友人としてのつながりがあります。一緒にイベントを開いたり、食事をしたり、ときにはコラボレーションを行ったり。最終的には、プロダクトそのものと、その背景にいる人たちの両方に共感できるかどうか。それが僕にとって最も大切な基準です。

コルボNYC店内

Image by: Colbo


Image by: Colbo

——そうした独自の基準でセレクトされたブランドの中で、今特に好調なブランドは?

 知り合いに紹介してもらい、初期から取り扱っている日本発の「ヨーコサカモト(YOKO SAKAMOTO)」は常に人気の高いブランドで、今ではお店を代表するブランドの一つになっています。このブランドの魅力のひとつは、コルボに置いている他のアイテムとも自然に調和するところです。単体で完成しているだけでなく、同じお客さまのワードローブの中で違和感なく共存し、新しい組み合わせを楽しめる。そうしたブランドには特別な価値があると思っています。

デザインの原点は素材にある 目指すのは効率では測れない“価値ある”服

??2023年にオリジナルブランド「コルボ」を立ち上げた理由を教えてください。

 コルボNYCという場所の価値観や世界観を、より深く表現したかったからです。オリジナルブランドをつくることは、コルボNYCをオープンした当初から思い描いていたヴィジョンでした。どうしてもセレクトだけでは伝えきれないものがある。だからこそ、それを形にするためには自分たちのブランドが必要だと考えるようになったんです。

 コルボは、単に服を販売するためのブランドではなく、コルボNYCの価値観を伝えるためのメディアとして立ち上げました。店に流れる空気感や、そこで生まれる人とのつながり、僕たちが日々触れている音楽やカルチャー。コルボの服には、そうした要素が自然と反映されています。

コルボ2026年秋冬コレクション

Image by: Colbo

コルボ2026年秋冬コレクション

Image by: Colbo

??コルボのアイテムをデザインする上で、最も重視していることは何ですか?

 アイテムをセレクトする際と同じく生地ですね。僕は生地を実際に触りながらいろいろ試すことが好きなので、どんなアイテムを作るときもまず生地を起点に考えます。

 使用している生地の多くはイタリアから仕入れています。現地の倉庫を回ってデッドストック生地を探したり、自分たちで洗い加工を施して新しい表情を引き出したりすることもあります。そうした素材探しを続けるなかで、「こんな生地があったらもっと面白いのに」と思うことも増えていきました。そこで最近はイタリアの織物工場と協業し、独自の混紡素材やウォッシュ加工を取り入れたオリジナル生地の開発にも取り組んでいます。

??効率化や大量生産が主流の時代に、あえて時間と手間をかけた服づくりを続けているのですね。

 効率だけを考えれば、もっと簡単なやり方はいくらでもあると思います。そのうえで、僕たちが時間と手間をかけるのは、シンプルに服づくりの面白さがそこにあるからです。生地を探し、触り、試しながら理想の素材を見つけていく。その過程で偶然生まれる表情や発見は、効率化されたプロセスの中からはなかなか生まれません。

 今は何でも早く、安く手に入る時代ですが、服までその価値観だけで語られてしまうのは少し寂しい気がするんです。服は生活必需品である一方で、人の感性や記憶に残る文化でもある。だから僕たちは、単に商品をつくるのではなく、長く付き合いたいと思える服をつくりたいと思っていて。効率や価格を追い求めるのではなく、自分たちが本当に良いと思えるものを追求した結果として時間も手間もかかっているだけなんです。あえて非効率を選んでいるというより、それ以外のやり方を知らないという方が近いかもしれません。

——2026年春夏コレクションは初めてランウェイショー形式で発表しました。

 以前からショー形式での発表はやってみたいと思っていました。ブランドにとって節目になる出来事ですし、写真だけでは伝えきれない部分まで含めて表現できる場だと考えていたからです。ただ、やるなら一般的なファッションショーをそのままなぞるのではなく、自分たちらしい形にしたいとも思っていました。伝統的なランウェイも好きですが、ときに形式的すぎて、少し張り詰めたものに感じることもあって。だからこそ、もっと自然体で、人と人とのつながりや空間の空気感が伝わるようなものにしたかったんです。

2026年春夏コレクション

Image by: Colbo

2026年春夏コレクション

Image by: Colbo

——お店の延長としての“コミュニティの場”のような?

 そうです。そのためには僕たちらしさを随所に反映したいと思い、僕の第二の故郷でもあるパブリック?レコーズを会場に選び、モデルには普段からコルボのコミュニティを形づくっている友人たちを起用しました。観客席には家族や親しい友人たちを招き、メディアも日頃から関わりのある人たちに限定するなど、あえてクローズドな環境で、服を見せるだけでなく、コルボを取り巻く人々や関係性そのものを表現する場を目指したんです。結果、想像していた以上に特別な時間になりました。友人たちがランウェイを歩き、家族や仲間たちがそれを見守る光景には自然な温かさがありましたし、服だけでなくコルボというコミュニティの姿そのものを表現することができたように思います。もちろん準備は想像以上に大変で、またすぐにできるかと言われたらイエスとは言いづらいですが(笑)。それでも、いつかまた近いうちに挑戦したいと思っています。

ショー会場風景

Image by: Colbo

「日本はファッションのメッカ」 新拠点で見据えるコルボの未来

??海外初のコルボ常設店舗をエストネーション六本木店内にオープン。ニューヨークの路面店とは異なり、スペシャリティストア内での展開ですが、ブランドらしさをどのように表現しましたか?

 コルボは服だけでなく、その背景にある音楽やコーヒー、家具、植物といったカルチャーも含めて、一つの体験として提案しているブランドです。その世界観を限られた空間の中でどう表現するかは大きな挑戦でしたが、今回出店のオファーをくれたエストネーションチームと時間をかけて準備を進め、色彩や素材感、植物、音楽、日本で探したヴィンテージ家具や什器など、ブランドを形づくる要素を丁寧に落とし込みました。ニューヨークの店舗と同じように、この場所を少しずつ成長させ、日本でのコミュニティを育んでいきたいと思っています。

Image by: FASHIONSNAP

Image by: FASHIONSNAP

??日本とニューヨーク、それぞれのファッションカルチャーの違いをどのように感じていますか?

 面白い質問ですね。日本とニューヨークでは、服との向き合い方に少し違いがあるように感じています。日本のお客さまは、素材や縫製、ブランドの背景など、服そのものへの関心がとても高い。ファッションに対する知識も深いですし、ものづくりや技術に対するリスペクトも強いと思います。だからこそ、服をじっくり見て、その価値を理解したうえで選んでいる印象があります。

 一方でニューヨークでは、ライフスタイルの延長線上で服を選ぶ人が多い印象があります。たとえば、仕事にも行けて、そのままディナーにも行けるような服。単なる機能性だけでなく、上質さや美しさを備えた実用性が求められているように感じます。ニューヨークは24時間動き続けているような街なので、服にもそうしたスピード感のなかで機能することが求められているのかもしれません。もうひとつ特徴的なのは、新しいアイデアやクリエイティブな挑戦に対するリスペクトが強いことです。無名のブランドであっても、その背景にあるストーリーやコンセプトに共感して選んでくれる人がいます。服そのものだけでなく、「何を信じてつくられているのか」に価値を感じる人が多い印象があります。

 もちろん優劣の話ではありません。日本には日本の素晴らしさがありますし、ニューヨークにはニューヨークの魅力がある。実際にコルボでも、日本で支持されるアイテムとニューヨークで人気のアイテムは少し違うんです。その違いを見るのも、ブランドを続ける面白さのひとつですね。

Image by: FASHIONSNAP

??服の背景にあるエピソードを重視する日本のファンに向けておすすめのアイテムを教えてください。

 選ぶのが難しいですが、まず外せないのがエストネーション限定のオーバーサイズシャツです。イタリアで見つけたデッドストック生地を使っていて、古びたような風合いや自然なしわ感など、私が生地に求める要素がすべて詰まっています。ゆとりのあるシルエットはコルボを象徴するシルエットでもあり、私自身も愛用しているお気に入りの一着です。

 そして次に、ヨーロッパのワークウェアに日本の入浴施設やスパ施設で貸し出される”温泉パンツ”のようなリラックスしたムードを掛け合わせたパンツです。ゆったりとしたシルエットで、自宅でもレストランでも気軽に着ることができる、私たちが大切にしている「心地よさ」や「ウェルネス」の感覚を体現したアイテムになっています。

 もう一つ、近年継続して取り組んでいる生地開発を象徴するワークパンツも忘れてはいけません。氷水で洗った後に冷水で染色する特殊な加工を施していて、タイダイのような表情が生まれるのですが、裁断する場所によって柄の出方が異なるため、一つとして同じものはありません。長年着込んだような表情がありながらも、最初から身体に馴染むような着心地を楽しめるところが気に入っています。

TK Shirt, Ivory Pinstripe

Image by: FASHIONSNAP

??最後に、今後の展望を教えてください。

 今後は日本の職人やメーカーと協業しながら、新しいプロダクトやプロジェクトを生み出していきたいと考えています。イベントやコラボレーション、限定アイテムなどを通じて、コルボの世界観をより多角的に発信していければと思っています。そしていつか日本で旗艦店をオープンすることも夢の一つですし、東京だけでなく大阪や京都、名古屋など、さまざまな都市とのつながりも深めていきたい。ファッションのメッカである日本には大きな可能性を感じていますし、これから長い時間をかけて成長していけることを楽しみにしています。

photography: Katsutoshi Morimoto (FASHIONSNAP)

最終更新日:

??COLBO at ESTNATION ROPPONNGI HILLS
場所:エストネーション六本木ヒルズ店
所在地:東京都港区六本木6-10-2 六本木ヒルズ ヒルサイド けやき坂コンプレックス1F
営業時間:11:00?20:00

聞き手&文?菅原まい

Mai Sugawara

FASHIONSNAP 編集記者

2002年、東京都生まれ。青山学院大学総合文化政策学部卒業後、2025年に新卒でレコオーランドに入社。中学生の頃から編集者を志し、大学生時代は複数の編集部でインターンとして経験を積む。特技は空手。趣味は世界中の美味しそうなお店をGoogleマップに保存すること。圧倒的猫派で、狸サイズの茶トラと茶白を飼っている。

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