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日本のナチュラルコスメ市場を牽引してきたブランドの一つである「スリー(THREE)」が、原点であるホリスティックなスキンケアに立ち返り、精油を軸にした商品作りを進めている。自社農園や蒸留所を整備し、佐賀?呼子の蒸留所を一般に開放する理由とはーー。佐賀県?唐津の自社農園とTHREE呼子蒸留所、さらにホリスティックリサーチセンターを尋ね、センター長の佐井賢太郎氏に話を聞いた。
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「精油」に本腰 ホリスティックな世界観を強化
スリーは、ポーラ?オルビスグループのACROから2009年に誕生。自然由来成分や精油を取り入れ、スキンケア、メイクアップ、ライフスタイルを横断するホリスティックな美しさを掲げたブランドとしてスタートした。その後、洗練された色づかいや質感を打ち出したメイクアップアイテムが支持を集め、認知を拡大。2013年には東京?青山に旗艦店「THREE AOYAMA」をオープン(2021年12月に閉店)し、“朝活”提案の先がけとしてブランドの世界観を発信。2013年にはタイに進出、その後、台湾やインドネシア、香港、韓国に出店しアジアでも存在感を発揮する。
転機となったのはコロナ禍。メイクアップカテゴリが打撃を受け売上も低迷したことを受け、ブランドの原点に立ち返り、強みであるホリスティックな世界観を強化する構造改革に着手した。精油を軸に、基幹スキンケアをリニューアルしたほか、ブランド初のフレグランスも立ち上げた。
精油の研究開発機関「THREEホリスティックリサーチセンター」
この根幹となる精油づくりでは、「精油をはじめとする植物の恵みと心?からだ?肌の関係を探求し、地域社会との取り組みを通じた新たな価値を創出?発信すること」を目的に、研究開発機関「THREEホリスティックリサーチセンター」を開設。熊本?南阿蘇(100反)や佐賀?呼子(約30反)、広島?尾道(約??反)周辺には自社農園が点在し、耕作放棄地を再利用しながら契約農家と連携してローズマリー、ベルガモット、マジョラム、フランキンセンスなどを栽培。それぞれの土地、南阿蘇、唐津、尾道には精油製造所を開設し、収穫後すぐに蒸留するといった、“本気”で精油と向き合い、現在では、ホリスティックなスキンケア分野が売上構成比の半数を超えている。佐井氏は「酸化による劣化を防ぐために、蒸留所の選定も農園との距離を第一にしている。質に直結するため鮮度にはこだわっている」と話し、もっとも遠い農園であっても蒸留所から車で30分ほどで着くことができる。

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呼子の自社農園?蒸留所体験
今回、呼子にあるスリーの自社農園を訪ね、ローズマリーの収穫を体験。対象とされたのは、横に広がった地面に近い新芽。地面に近い部分は蒸れやすく状態が悪くなる恐れがあるといい、その部分を刈り取ることで植物の健全な成長を促す狙いがある。収穫作業は年に2回から3回、契約農家が中心となって行うほか、スリーの社員も年に1度は体験するという。

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併わせてTHREE呼子蒸留所も訪問。同蒸留所は全長200m、土日では約50件もの露店が軒を連ねる呼子朝市通りに構える。国内最大規模とされる1600Lの蒸留機を備え、葉の状態で約200kgものハーブを投入することができる。抽出の際には水蒸気蒸留法を採用。蒸留機の上部からハーブを入れ、下から蒸気を送ることで、ハーブを通過する過程で葉に含まれる香り成分を取り込む。香り成分を含んだ気体は冷却すると液体になり、精油と水に分離。精油は水より軽いため、上部に浮き、水と分かれた状態で回収することが可能。蒸留にかかる時間は対象物にもよるものの、ローズマリーの場合大体2時間ほどで、精油の還元率は約0.5%程度(200kgの原料から約1kg)。精油と分離された水分にも香り成分が含まれており、クレンジングアイテムに活用している。
現状、自社ハーブガーデンで賄えている精油量は全体の1割以下にとどまるが、今後5年で50%、10年スパンで70%程度まで高めることを目指すという。現在も全国各地の蒸留所を見て回り、将来的な比率向上を見据え、国内各地で栽培?蒸留体制の整備を進めている。

ハーブはただ単に投げ込むのではなく、空気の通り道ができないように丁寧に敷き詰める必要がある。空洞ができると蒸気が偏って通過し、蒸気に含まれる香り成分が減少し、精油の収量にも影響するためだ。
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また、9月12日にはこうしたハーブガーデンでの収穫から蒸留体験まで、スリーの精油づくりを体験することができるツアーを一般向けに開催。現在、公式オンラインサイトで応募を受け付けている。
ブランドの哲学を伝える 開かれた「蒸留所」
スリーが進める原料づくりは、研究?生産のためだけに“閉じた”取り組みではない。そのプロセスを生活者に開き、ブランドの思想を体験として伝える拠点でもある。本来、化粧品原料をつくる蒸留所は一般公開されるものではないが、地域の活性化にもつながる場として、来訪者が精油の蒸留工程を見学することができる施設に設計されている。佐井氏は「施設を公開することは、単なるブランディングではなく、ブランドの哲学を生活者に伝える役割を持っている」と話す。

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呼子蒸留所は2025年秋に、佐賀県唐津市の呼子朝市通りに面する古民家を改装してオープンした。「苗つくりから収穫、蒸留、研究まで。」を精油創りのモットーに、蒸留過程の見学に加え、エッセンシャルオイルやハーブティー、アイスなどの販売、オリジナル精油を作るワークショップなども実施している。

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佐井氏によると、同施設には1日あたり平日で約50人、休日で150人が来場するという。ゴールデンウィークの期間には1日200人が来場する日もあり、そのうち約3割程がスリー商品の購入に至った。「商品を買うことはECでもできるが、実際に体験することでより理解が深まったほか、『思い出』という付加価値を生み出せることができたのではないか」と述べ、さらに「ビジネスにつながることで、精油にかかるコストの一部を抑えることができる点は、ブランドにとって大きな強みになる」と語る。こうした好循環を踏まえ、今後は広島や熊本の施設でも蒸留所でのワークショップや物販の実施といった試みをしていく予定だという。
THREE呼子蒸留所の特徴は、こうしたブランドの体験拠点であると同時に、呼子で進む町おこしの一角に位置づけられている点にもある。呼子は古くから港町として栄え、イカ釣り漁業や朝市で知られてきた地域だが、近年は人口減少や高齢化に伴う空き家の増加、朝市通りの出店者減少が課題となっている。こうした中、エスニックファッション?雑貨店「チャイハネ」などを手掛けるアミナコレクションが主導する町おこしプロジェクトでは、空き家となっていた古民家をリノベーションした宿泊施設「中尾甚六ホテル」や飲食店、サウナなどを朝市通り周辺に整備。観光客を誘致し、地域経済の復興を目指している。この取り組みに共感したことから、スリーもプロジェクトに参画し、「香り」「植物」「ものづくり」に触れる体験を提供する施設として呼子蒸留所を一般向けにも開放している。
メイクアップ需要の変化を受けて始まったスリーの取り組みは、単にカテゴリ構成を変える取り組みではない。スキンケアを継続して選ばれるブランドにするために、原料の栽培、精油の抽出、地域との関係づくりまでを組み直す試みでもある。呼子蒸留所は、その変化を可視化する場の1つだ。精油とホリスティックビューティを軸に、スリーの新たな挑戦は今後も続いていく。

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最終更新日:
?? スリー:公式オンラインサイト
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