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「必然だった」シモーン?ロシャが初のメンズショーで解体するマスキュリニティ

?芳之内史也

Image by: Simone Rocha

Image by: Simone Rocha

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 「今のファッション界において、男性に対してより優しいアプローチが必要だと感じていたか?」という問いに対し、シモーン?ロシャ(Simone Rocha)はこう答えた。「必要性を感じて何かをするわけではありません。ただ、そうせずにはいられないのです。必要性というよりは、必然性でした」。

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 第110回ピッティ?イマージネ?ウオモ(Pitti Immagine Uomo)のゲストデザイナーとして、ブランド初となるメンズコレクションショーを披露した「シモーン?ロシャ」。舞台となったのは、1656年に建設された歴史あるペルゴラ劇場(Teatro della Pergola)だ。「人々を隔離された空間に招き入れ、彼らだけの世界に足を踏み入れさせるのが好き」と彼女が語る通り、観客は外界から切り離された特異な空間へと引き込まれた。2027年春夏メンズコレクションのインスピレーション源は、マーチャント?アイヴォリー監督の映画「眺めのいい部屋」。前回の2026年秋冬コレクションから地続きの物語として、アイルランドからフィレンツェへと旅をしてきた人物の「キャラクター研究」であり、彼が主人公としてステージに立つというコンテクストが背景にある。

 コレクションの核は、テーラリングやシャツといったメンズウェアの古典的なコードに「敬意を払いながらも、少し混乱させ、乱す」というアプローチにある。ファーストルックのヴェネチアンウールのイブニングスーツを皮切りに、サルトリアの要素は次々と解体されていく。パーツは大胆に切り抜かれ、男性服には珍しいエプロンやピナフォアへと変容し、伝統的なキルトは深いプリーツのトラウザーズへと仕立て直された。

 今季の特徴として、実用的なワークウェアやスポーツウェアとのミックスが挙げられる。テクニカルナイロンのコーチジャケットやジップアップのトラックジャケット、アシンメトリーなフリルがあしらわれたラグビージャージーといったスポーティなアイテムが、テーラリングと同居する。足元には、オックスフォードシューズだけでなく、パールのピアスディテールが施されたナッパレザーのバレエスリッパを合わせ、労働者や芸術家、ダンサーといった「人生のユニフォーム」を思わせるルックが次々と登場した。

 フィレンツェという街の記憶も、コレクションの随所に生々しく息づいている。「建物の漆喰の造形から大理石、コーニスに至るまで非常に強い影響を受けた」と語る通り、会場にあった古い衣装トランクの裏地から見つけ出したというフローラルモチーフを引き出し、コレクションに落とし込んだ。また、ブランドのシグネチャーであるオーガンジーやイギリス刺繍といった繊細な素材と並んで多用されたのがリネンだ。リネンを用いた理由について、「テーブルクロスやカーテンのような家庭的な雰囲気、つまり『場所の感覚』を与えるため」とロシャは説明する。装飾的な美しさと、生活に根ざした素朴な素材感。このコントラストこそが、彼女のクリエイションを単なるロマンティシズムにとどまらせない理由であろう。

 「すべてがファンタジーであるべきだとは思いませんし、すべてが現実であるべきだとも思いません。その中間の、ちょうど良いバランスが重要です」。そう語るシモーン?ロシャにとって、ファッションとは「常に動き、呼吸し、変化する」生き物のような存在だという。男性服の歴史に敬意を払いつつ、自らの「必然性」をもってマスキュリニティの硬直したルールを優しく解きほぐしたシモーン?ロシャ。フィレンツェの由緒ある劇場で披露されたこの新たなキャラクターの旅路は、現代のメンズワードローブにこれまでにない自由な呼吸と、確かなリアリティをもたらしていた。

Simone Rocha 2026年秋冬

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Simone Rocha -Men's- 2027年春夏コレクション

2027 SPRING SUMMERファッションショー

最終更新日:

FASHIONSNAP ディレクター

芳之内史也

Fumiya Yoshinouchi

1986年、愛媛県生まれ。立命館大学経営学部卒業後、レコオーランドに入社。東京を中心に、ミラノ、パリのファッションウィークを担当。国内若手デザイナーの発掘と育成をメディアのスタンスから行っている。2020年にはOTB主催「ITS 2020」でITS Press Choice Award審査員を、2019年から2023年までASIA FASHION COLLECTIONの審査員を務める。

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