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【オーガニック?ナチュラルコスメ特集】 “思想”を押し付けず、市場を広げたコスメキッチン

 今から約20年前、日本において「オーガニック?ナチュラルコスメ」という言葉がまだ一般的ではなかった2004年に誕生した「コスメキッチン(Cosme Kitchen)」。同ショップはオーガニック?ナチュラルコスメを中心とした感度の高いセレクトと悩みに寄り添う接客で支持を広げてきた。

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 かつては一部の感度の高い層に支持されているというイメージもあったオーガニック?ナチュラルコスメは、いまや日常の選択肢の一つへと広がりつつある。黎明期から市場の変化を見つめてきた、リテール事業本部 副本部長 兼 リテールMD部 部長の清水朝子氏に、コスメキッチンが果たしてきた役割と、これからのナチュラル?オーガニックの可能性について聞いた。

清水朝子氏

リテール事業本部 副本部長 兼 リテールMD部 部長

 店舗スタッフ、営業、バイヤーなどを経て、MD(マーチャンダイザー)に就任。コスメキッチン全体の品揃えの責任者として、バイヤーへの商品依頼やメーカーとの新規商品開発、マーケティング面でのディレクションも担当する。

「駆け込み寺」としてオーガニックを提案

??当時はオーガニックコスメ、ナチュラルコスメという言葉も浸透していなかった時代ですが、なぜそこに目を向けたのでしょうか。

 当時欧州を中心とする海外では、「オーガニックコスメ」が浸透しており、とりわけ感度の高い層からの支持を集めていたので、伸び代があると考えたんです。日本では「オーガニック」という言葉自体もほとんど知られていない時代でしたが、だからこそチャンスがあると思いました。

 また、店舗運営する中でスタッフが、オーガニックコスメを使うことで肌状態が改善したといった原体験もあり、肌悩みや体の悩みを解決する手段として植物のパワーに可能性を感じたことも背景にあります。

??店舗運営を始めた当時はどのような顧客層だったのでしょうか?

 当時は輸入商品そのものが珍しく、パッケージや世界観も含めて新鮮に映っていました。そのため、一部の感度の高い層から支持されていた面はあります。また、当時はオーガニックが「敷居が高いもの」という世間的なイメージもあったと思います。

 ただ、実際に来店されていたのは、等身大の悩みを抱えるお客さまでした。

??というと

 肌荒れやニキビ、女性特有の不調など、友人にもなかなか相談できないけれど、日常の中では切実な悩みを抱えている…。そうした人たちが「オーガニックやナチュラルなコスメなら自分に合うものがあるんじゃないか」という思いを抱えて足を運んできました。

??オーガニックに救いを求めて来られる方がいらっしゃった、ということですね。

 そうですね。病院のように深刻になりすぎずカジュアルに相談ができるセレクトショップという点もお客さまにとって良かったのだと思います。当時の店頭スタッフも、お客さまと同じように肌や体の悩みを持つ、等身大の存在でした。だからこそ悩みに共感でき、一人ひとりに合ったブランドやアイテムを提案することができたのだと思います。

 私たちはよくコスメキッチンを表現するときに、「駆け込み寺」という言葉を使うのですが、まさに悩みを持った方が気軽に相談しに来られる場所になっていたのだと思います。

Image by: Cosme Kitchen

??フェムケアアイテムも、オープン当初から取り扱っていました。当時としては先進的な取り組みだったと思います。

 これも根本としては、先ほどのお話と同じです。お客さまの悩みを解決することができるアイテムだと考えたからです。私たちが商品をセレクトするときには、常に店舗のスタッフが、聞き出したお悩みを解決できるかどうかが大きな基準の一つになっています。

 店頭でお客さまと話す中で、なかなか治らない肌悩みの裏には女性の周期やPMS、生理の悩みに関連しているのではないか、という仮説が出てきたんです。実際にそれらのケアを通じて肌調子の改善が期待されることが分かりました。このように何かトレンドを作ろうとしたというよりは、お客さまの悩みが起点となり、その解決手段として商品を取り入れた結果、フェムケアを早くから取り入れることになったのです。

思想を押し付けないオーガニック

??「オーガニック」というと少し前までは“意識が高い”イメージを持たれていたように思いますが、近年はよりカジュアルで手に取りやすいと感じます。

 そのカジュアルさこそが私たちがずっと大切にしてきた部分で、オーガニック?ナチュラルを思想として押し付けすぎなかったことが、市場を広げるうえで重要だったと考えています。もともとオーガニックには、環境問題や健康といったキーワードと深く結びついており、それ自体はとても大切なものです。ただ、だからこそオーガニックは「こうしなければならない」と義務のように伝えてしまうと、コスメとしての楽しさが失われてしまう。

 私たちは、オーガニックの思想を大切にしながらも、ビューティとしてのときめきや高揚感を同じくらい大事にしてきました。「これを使ったらどうなれるんだろう」というワクワク感があること。そこを失わなかったからこそ、敷居を下げながらも、一過性のトレンドではなく続けてこられたのだと思います。

??黎明期から一貫して“カジュアルさ”をいい意味で大切にされているんですね。

 はい。そしてそれこそがお客さまと一緒に歳をとっていける秘訣だと考えています。コスメキッチンはセレクトショップなのでたくさんのブランドの商品が並んでいます。それでもお客さまが「コスメキッチンの商品が好き」と言ってくださるのは、私たちの価値観を好きだと言ってくださっているのだと思います。

 実際にオーガニック?ナチュラルが少しずつ広がり始めた頃に20代だったお客さまが、そのまま私たちと一緒に年齢を重ねてくださっています。他にも、IPコラボなどを通じて新規の若いお客さまたちを取り込んでもいます。

4月にはハローキティと初コラボ

??いい意味での“カジュアルさをうまく取り入れられている理由はなんですか?

 私たちがファッション事業を母体としていることが大きいと思います。ファッションもビューティも人の心をときめかせる事業です。クリエイティブやデザインの部分を、マッシュという企業はとても大事にしています。

 その母体があったからこそ、コスメキッチンは「オーガニック」という、少しストイックで難しそうなイメージから脱却できたのだと思います。「楽しい」「かわいい」「使ってみたい」と感じて手に取ったら、「実はこれ、オーガニックの商品だったんだ」と気づく。そういう出会いを創出してきました。それは当初からコスメキッチンが大事にしている、フィロソフィーのようなものです。それこそが、私たちがオーガニック?ナチュラルを牽引できた理由だと思います。

Image by: Cosme Kitchen

「なんとなく不調」に応えるオーガニック

??現在の商品に求められるものに、変化はありますか?

 以前は、オーガニック?ナチュラルであることや、海外の輸入品であること自体に価値を感じていただける面がありました。もちろん今でも、オーガニックコスメならではの処方や中身は大切ですが、近年はそれに加えて、コスメとしての機能性やパッケージのデザイン性、日常の中で使いやすいかどうかも、より重視されるようになってきています。

??「オーガニックだから」だけでは選ばれにくくなっている、ということでしょうか?

 そうですね。オーガニックであることは大切な前提ですが、それだけではなく、「効果を感じられるか」「使っていて気分が上がるか」「生活の中に取り入れやすいか」といった要素も求められるようになっています。

 特に日本のお客さまには、「かゆいところに手が届く」ような細やかさや便利さも大事です。そうしたニーズに応えていくうえでは、国内メーカーさんとのものづくりも重要になっています。輸入ものに比べて、細かな調整や商品化までのスピードを高めやすい面があるからです。

??求められる商品が変わるということは顧客の悩みにも変化があるのでしょうか。

 お客さまの悩みはより複雑になっています。一人の方が、肌、体、心の不調など、いくつもの悩みを同時に抱えていることも多いです。たとえば以前は「ニキビ」と1つに捉えられていたものも、今はその背景に、睡眠、疲れ、ストレス、ホルモンバランス、生活リズムなど、さまざまな要素が関係していると考える方が増えています。

??コロナの前後の変化も大きかったのでしょうか?

 大きかったと思います。リモートワークが増え、家にいる時間が長くなったことで、オンとオフの切り替えが難しくなった方も多かった。そこから、単純な肌トラブルではなく「なんとなく不調」という状態に向き合う方が増えたと感じます。

 原因を一つに断定できない不調を、自分で見つけ、自分で整えていく。そうしたセルフケアの意識が高まったことは、大きな流れだと思います。

??そうした潮流は、商品のセレクト基準にも影響していますか?

 そうですね。ただ、悩みを解決するという軸はぶらさずに、成分面、ブランドや商品の背景、原材料の製造方法、環境面への配慮、そして使う方の心をくすぐるアイテムかどうかまで見ています。オーガニック認証だけでなく、お悩みに寄り添えるか、心をときめかせられるかまで含めて、包括的に判断しています。

Image by: Cosme Kitchen

これからのオーガニック?ナチュラル

??現在は韓国コスメにも積極的に取り組まれています。

 韓国コスメには、機能性やトレンド感の印象が強く、一見するとオーガニック?ナチュラルとは距離があるように見えるかもしれません。ただ、私たちはオーガニック?ナチュラルを、特定の認証や成分だけで定義されるものとは捉えていません。

 最近のお客さまには、「少し攻めたスキンケアを試したい」「新しい質感や手応えに出合いたい」というニーズもあります。そうした気持ちを排除せず、その時々の悩みや気分に合わせて選べる幅を持たせる。それも、コスメキッチンらしい提案だと考えています。本格的なオーガニックアイテムから、機能性やトレンド感を楽しめるアイテムまで幅があるからこそ、店頭で自分に合うものを見つける楽しさが生まれるのだと思います。

??認証や成分だけでなく、機能性やトレンド感も含めて提案するようになったことで、オーガニック?ナチュラルの捉え方も広がっているのですね。

 私たちは「肌や心に、おいしいもの」というコンセプトのもと、心も豊かに美しくなれる手段として、オーガニック?ナチュラルを提案してきました。その根幹は変わっていません。

 一方で、お客さまの悩みや求めるものは時代とともに変化しています。認証だけに捉われるのではなく、機能性や使い心地、気分が上がるかどうかまで含めて提案の幅を広げてきました。考え方は変えずに、表現や選択肢を広げてきた感覚に近いです。

??これからのオーガニック?ナチュラルコスメは、どのようになっていくと思いますか?

 これからは、オーガニックやナチュラルであることと、機能性をどう両立させるかがより重要になると思います。ヨーロッパではデータに基づいた肌効果や成分への関心が高まり、韓国では機能性にデザインやトレンド感を掛け合わせたアイテムが支持されています。そうした各国の強みを、オーガニック?ナチュラルコスメの中にどう取り込んでいくかが、今後の課題になると思っています。

最終更新日:

平松将

Sho Hiramatsu

FASHIONSNAP 編集記者

青山学院大学経営学部卒業後、大手事業会社を経て文化服装学院に入学。服作りを学んだ後にレコオーランドに入社。
ファッション、アート、カルチャーに加え、人々の暮らしなどにも関心を持つ。日課としてジャーナルとメモをつける記録愛好家兼トレーニー。骨格筋量41.4kg

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