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日本と世界のギャップにどう挑む? 「東レ合繊クラスター展」で知るサステナブル素材の現在地

?佐々木エリカ

Image by: FASHIONSNAP

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 東レが日本の繊維産業の活性化を目的に2004年に設立した「東レ合繊クラスター」が、東京?原宿の「WITH HARAJUKU HALL」で「第16回 東レ合繊クラスター総合展」を開催した。

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 今年のテーマは「TEXTILE INTELLIGENCE ~未来に紡ぐ テキスタイルの可能性~」。全28社が約500点のサンプルを展示し、日本の繊維産地の企業が培ってきた伝統的?革新的な技術と最先端素材を融合させた、“未来を見据えた新たなものづくりの形”を紹介。サステナビリティ?SDGs分野を担当するFASHIONSNAP編集記者が、東レ合繊クラスターのサステナブルイノベーション分科会(以下、サステナ分科会)担当者にサステナブル素材市場の最前線を聞いた。

 会場では、「サステナブル(環境配慮型素材)」「ハイセンシティビティ(高感性素材)」「ファンクション(高機能素材)」「ユニフォーム」「インテリア」の5つのコーナーで展示を構成。そのほか、東レ合繊クラスターの活動概要や、新たに会員となった東レのスピンオフベンチャー 「ムーンレイカーズ テクノロジーズ(MOONRAKERS TECHNOLOGIES)」の活動を紹介するブースも展開した。

「売り手を選ぶ」からの脱却、日常着に向けたサステナブル素材

 世界のファッション市場において、サステナブル素材への関心と需要をけん引しているのは、ヨーロッパやアメリカの大手ブランドだ。昨年、サステナ分科会はそうした需要に対応する形で、展示の約3分の2を本格的なアウトドア用途などに向けた透湿防水素材で構成したところ、「性能面では遜色はないが、売り手を選ぶ」という販売面の課題に直面したという。

 その反省を踏まえ、今年の展示では透湿防水素材に加え、カジュアルな用途にも転用しやすいためにより多くのブランドが使いやすい一枚物(シャツやライトアウターといった裏地なしで仕立てられるアイテム)の素材を拡充した。

 ブースでは、リサイクルナイロンをはじめ、植物由来の原料を一部使用した環境配慮型ストレッチ素材「ヴァーチャレックス」や、東レのリサイクル繊維ブランド「アンドプラス(&+)」などを展開。「ナチュラル」「風にゆれる」「軽さ」「透け感」などをキーワードに、より多様なアパレルに活用できる風合いや質感を表現したテキスタイルの提案が多く見られた。

「染色→顔料プリント」で環境負荷低減

 今回の展示で新たに披露された素材の一つが「ナイロンバイメタル」だ 。ハリを持たせるナイロン糸とリサイクルポリエステルを掛け合わせたもので、高い伸縮性を特徴とする。リサイクル原料を50%以上使用しているため、東レの環境配慮型素材「シンセティックマジック(SYNTHETICMAGIC)」の規格にも該当。 今年は展開数が限られているが、来年に向けてさらにラインナップを広げていくほか、将来的にはブランド化も目指していく方針だという。

ナイロンバイメタル素材を用いたパンツ(左)

 そのほか、染色を顔料インクジェットプリントに置き換えることで、製造工程における環境負荷低減を目指した素材も提案。一般的な染色は、水と染料、薬品で満たした釜で生地を4?5時間かけて染めるため、多くの水とエネルギーを消費する。これに対し、顔料プリントは染料とのりを混ぜたものを生地に付着させる加工手法で、発色させるための蒸し工程や余分な染料を洗い流す工程が不要となるため、環境負荷を大幅に削減できるという。

ベースには、石油を使わない100%植物由来のバイオナイロン素材を使用。

サステナブルな「透湿防水素材」を街着にも

 さらに、新たな提案として登場したのが、ニットの透湿防水素材だ。リサイクルポリエステル製のニット生地に透湿防水フィルムを貼り合わせた2層構造で、ニットならではのしなやかなストレッチ性と、合繊感のない温かみのある風合いが特徴。透湿防水性に加え、フィルムが羽毛の抜けを防ぐ効果もあるため、ダウンジャケットの表地にも適しているという。

「ニットは表面が摩耗に弱いため、本格的なアウトドアやスポーツ用途では、毛羽立ちなどの懸念からこれまで提案されてきませんでした。しかし、街で着るダウンジャケットなどであれば問題ありません。従来とは異なる新しい用途を提案できたらと考えています」と担当者。市場での評価次第では、来年以降さらにラインナップを増やすことも考えている。

国内市場では“産みの苦しみ”の段階

 日本のファッション市場では、サステナビリティに対する意識が欧米ほど浸透していないのが現状だ。そのため、サステナブル素材への需要がまだ比較的少なく、生産量が少ないことから価格が割高になる“産みの苦しみ”の段階にあるという。

 「ヨーロッパのお客さまは『リサイクル素材でなければ使わない』と言ったり、GRS(Global Recycle Standard)*やブルーサイン(bluesign)*などの国際的な認証の有無を厳しく問うてくるなど、サステナビリティに対する視点や意識が日本とは全く異なります。だからこそ、私たちから国内市場にもメッセージを発信していく必要があると考えています」とその思いを語った。

* GRS:製品に含まれるリサイクル原料の割合や履歴を追跡?検証するだけでなく、製造工程における環境的?社会的配慮、化学物質の安全な管理までを総合的かつ厳格に審査する国際認証基準。サステナブル素材の信頼性を担保する重要な指標となっている。

*bluesign?認証:スイスに拠点を置く機関が運営する、繊維?アパレル業界向けの国際認証。製造工程の初期段階から有害物質を排除し、環境負荷の低減、労働者や消費者の安全が確保されていることを証明する、世界で最も厳しい基準の一つ。

最終更新日:

文?佐々木エリカ

Erika Sasaki

FASHIONSNAP 編集記者

埼玉県出身。早稲田大学国際教養学部卒業後、国内大手アパレルメーカー、ケリング傘下ブランドのMDなどを経験した後、2023年にレコオーランドに入社。現在はウィメンズのデザイナーズブランドを中心に、サステナビリティやSDGs、教育分野も担当。ファッションやカルチャーに加えてジェンダーや社会問題にまつわるトピックにも関心があるため、その接点を見出し、思考や議論のきっかけとなるような発信をしていけたらと願っている。

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