
夏を迎えたパリの突き抜ける青空の下、ピエールパオロ?ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)が手掛ける「バレンシアガ(BALENCIAGA)」の新生オートクチュールコレクションが日の目を浴びた。場所は、パリ14区に位置する「パリ国際大学都市(Cité Internationale Universitaire de Paris)」。オートクチュールの伝統的な発表の舞台であるサロンから飛び出し、降り注ぐ自然光が鮮烈な色彩とシルエットを浮かび上がらせた。
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クチュールメゾンとしての本質を問う
創設者クリストバル?バレンシアガの遺産を継承するメゾンにとって、通算55回目となる今回のコレクション。1年前にクリエイティブディレクターに就任したピッチョーリが、伝統あるアトリエで職人らとの対話を経て、何を創造するのか。クチュールメゾンとしての本質を問う重要な役割を担っている。
「このコレクションはアトリエの技術者によって生まれました。彼らこそがクチュールそのものです」とピッチョーリ。先行する2シーズンのプレタポルテコレクションが物語っているように、クリストバルのアーカイヴとメゾンのコードをなぞりながら、ピッチョーリのモダンなアイデアとアトリエの技術で”リキャリブレーション(再定義)"することによって、現代のバレンシアガ像を作り上げようとしている。
日常着が起点 衣服の内側から変革
その新たなヴィジョンを象徴するファーストルックは、伝統的なクチュールドレスの概念とは一線を画していた。極上のシルクで仕立てられたクリーンなTシャツに、サハラベージュのSuper 100’sウールを使用したラージパンツ。そこにサンセットレッドのシルクガザールによるバルーンジャケットを羽織ったアンサンブルスタイルは、日常着が起点となっていることが見て取れる。プレタポルテと同様、多くのスタイルに機能的なポケットを装備している点も、現代女性へのまなざしを感じさせる。


ピッチョーリは、衣服の内部から変革に踏み込んだ。着用する人の身体を3Dデジタルスキャンし、カシミヤのテーラードコートやドレスの内側のレザー構造に反映して成形することで、身体から浮遊するようなシルエットを実現。フェザー刺繍などの装飾を、あえてアウターやスカートの内側に忍ばせるなど、見えない部分にまでクチュリエの技術を光らせる。




先進素材と解放的なシルエット
バルーンシルエットやトラペーズラインといった、クリストバルの代表的な立体フォルムを踏襲しながら、自由な視点で解放。最低限のシームによるミニマルな仕立てを探求し、ピッチョーリならではの鮮やかな色彩が映える。同じシルエットのドレスが反復して登場し、2体目は黒一色に還元する演出では、形という本質を際立たせた。異なる2つのアトリエ、タイユール(テーラリング)とフルー(ドレス)の技術を融合したスタイルも、今回の特徴だ。




テキスタイルには、バイオエンジニアリングによる先進素材を導入。再生可能なシルク代替素材「AMSilk」は、クモの糸に近い分子構造により、鋼鉄の約2.5倍の引張強度を備える。また、クリストバルが生み出した素材を再解釈した「ネオ?ガザール」は、表地だけでなく内部の構造にも機能。いずれもプレタポルテで使用してきた素材を、アトリエの手仕事と融合してクチュールドレスに昇華した。


「ル?シティ」がメタリックに
帽子デザイナーのフィリップ?トレイシー(Philip Treacy)との協業では、頭部から上半身を包み込む造形をフェザーで仕立てた。また、アイコンバッグ「ル?シティ(Le City)」がゴールドとシルバーのメタリックカラーで登場し、ミニマルなスタイリングにシャープな輝きのアクセントを添えている。


Image by: ?Launchmetrics Spotlight
解放的な屋外のランウェイは、周囲に建つ学生寮の窓から、未来を担う学生たちも見つめていた。フィナーレでは鳴り響く拍手の中、ピッチョーリがアトリエのクチュリエたちを率いて登場。彼らの白い作業衣が光を帯び、互いを讃え合う姿が印象的だった。「このコレクションは、さまざまな想いの結晶です。私たちだけの言語を築き上げました」とピッチョーリ。プレタポルテに続き、メゾンの中核であるアトリエから“ネオ?クチュール”が放たれたことで、真の意味でバレンシアガの新時代が始まりを告げた。

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