


先日、久しぶりに銀座の「ワークマン(WORKMAN)」へ行ってきた。以前とは、売場の景色が変わっていた。売場の主役は得意の「機能」だ。「着る方が涼しい」「-10°C」「UVカット」「遮熱」、そんな言葉が売場のあちこちに並び、お客さんもデザインより機能表示をじっくり見ながら商品を手に取っていく。
インバウンド客も、まるで日本の夏を乗り切る装備を探すように、酷暑対策商品をまとめて購入していた。さらに扇風機の入った「ファンウエア」は芸能人を起用して一般向けへ広げようとしている。リカバリーウエア「メディヒール(MEDiHEAL)」も相変わらず人気が高い。
そんな売場を見たあとでは、「6月既存店売上高前年同月比8.8%減」と言われても、巳之助は正直、少しポカンとしてしまった。本当に「ワークマン」は失速したのだろうか。
2027年3月期の計画は、営業総収入1803億円、営業利益337億円。営業利益率は18%台を見込む。6月は前年割れとなったものの、第1四半期累計では既存店売上高は、113.3%と2ケタ増を維持している。つまり、月次は荒れても、会社が見ている通期シナリオはまだ折れていない。
ワークマンは商売を変え始めている。以前はプロ向けだったが、今は一般消費者にも広がった。目指しているのは、「生活を快適にする機能を提供する」企業だ。商品の開発テーマは、ファッションではなく社会課題になった。
ファッションは流行が終われば値引き販売になる。しかし機能商品は違う。冷感インナーもレインウエアも、機能が変わらなければ昨年物でも十分価値がある。商品の価値は流行ではなく機能で決まる。これが「ワークマン」の強みだ。だから大量値引き販売に追われにくい。巳之助は、アパレル企業ではなく「機能ブランド」へ進化し始めた会社だと思っている。
なぜ競合は「機能」を前に出さないのか。一般のアパレル企業はデザインやライフスタイルを前面に出す。ところが「ワークマン」だけは違う。「-10°C」「着る方が涼しい」「気化冷却」「UVカット」と、まるで家電製品の性能表のように、機能そのものを売っている。作業服メーカーとして、格好より性能を売ってきた文化がある。その文化を一般向けへ広げ、若い女性やシニアにも支持が広がった。
そして、「ワークマン」はなぜ海外に行かないのか。商品力は十分だが、「ワークマン」は国内を優先している。理由は国内に伸びしろがあるからだ。2026年6月末時点の店舗数は1107店を超えたが、その中で一般消費者向けの「ワークマンカラーズ」は、まだ100店にも届いていない。
さらに日本は、猛暑、梅雨、台風、豪雨、花粉まである世界でも珍しい市場だ。今は海外ではない。日本という世界一厳しい市場で勝つこと。「ワークマン」は、まずそこを選んだ。酷暑対策商品、リカバリーウエア、「ワークマンカラーズ」への転換という中長期の成長シナリオは、まだ崩れていない。7月月次と第1四半期決算が次の注目点だ。株価は月次で動くが、企業価値はビジネスモデルで決まる。
6月前年割れだけで判断するのは早い。「ワークマン」が売っているのは服ではない。暑さや紫外線、疲労から生活を守る「機能」そのものだ。気候変動が続く限り、この市場はまだ大きくなる。「ワークマン」は、服を売る会社から、日本の酷暑と戦う会社へ変わり始めている。
プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。
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