
2026年上半期に撮影したスナップより
Image by: FASHIONSNAP

2026年上半期に撮影したスナップより
Image by: FASHIONSNAP
下着をファッションアイテム化した「ランジェリーコア」のトレンドが本格化している。近年ランウェイやレッドカーペットで存在感を放っていたこのスタイルが、今年に入りマス層まで拡大。「ジーユー(GU)」が6月から販売している「サテンキャミソール」(1490円)は発売前からSNSでバズり、売り上げは計画比50%増と好調に推移している。下着は“見えてもいい”から“見せる”時代へと変化。ランジェリーコアが注目を集める背景を探った。
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“見せてもいい”から“見せる”下着へ
ファッション史とは、衣服と身体における固定観念へのアンチテーゼの歴史でもある。ポール?ポワレ(Paul Poiret)による脱コルセット、「シャネル(CHANEL)」によるジャージー素材の採用、「マリー?クワント(MARY QUANT)」のミニスカートは、当時の「常識」を打ち破ることで、ファッショントレンドとして広がってきた。
昨今のランジェリーコアの台頭も、遠からずこの系譜上にある。具体的には、サテン生地と繊細なレースを組み合わせたキャミソールや、なめらかなシルエットのスリップドレスのようなアイテムのほか、シアーな素材からアンダーウェアを覗かせるスタイルなどを指す。
2010年代の「フリー?ザ?ニップル(Free the Nipple)*」運動や、レッドカーペットでの「ネイキッドドレス」の流行を経て、ファッションとして肌を見せる心理的抵抗感は徐々に薄れていった。同時期にランウェイではレースやチュールなどのトランスペアレント(透け感)な素材が流行したほか、Y2Kトレンドによって、1990?2000年代初頭に大ヒットしたキャミソールが再ブレイク。スタイリングに合わせる“見せてもいい下着”の拡大も、ランジェリーコアのブームを後押しした。
*2012年頃から始まった、女性はブラをつけなくてはいけないという考え方に対し、トップレスの権利を主張するアクション。マドンナ、ナオミ?キャンベルといったセレブも発信に参加した。
そして、“見せてもいい”から“見せる”下着の流れを決定付けたのが、「ミュウミュウ(MIU MIU)」だ。2020年代初頭からローライズ、マイクロミニボトムスを打ち出し、ボディプロポーションに新たな風を吹かせた。2023年の春夏シーズンは下着が透けるシースルーのルックを披露。続く秋冬シーズンでは、ブルマを彷彿とさせるようなデコラティブなショーツを大胆に取り入れ、SNS上で賛否を巻き起こしながらも、“ファッショナブルなアンダーウェア”を印象付けた。

「ミュウ ミュウ」2023年春夏コレクションより

「ミュウ ミュウ」2023年秋冬コレクションより
その後、「ルイ?ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「バーバリー(BURBERRY)」「グッチ(GUCCI)」「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」といったラグジュアリーブランドが追随。セレブやK-POPアイドルが日常的な装いとしてSNSで拡散したことで、一般層へも広がっていった。
マス市場にも伝播 日本はレイヤードで独自に発展
海外では1枚で着用するスタイルが目立つ一方、日本のマス市場では汎用性の高い“レイヤードアイテム”として支持を集めている。「ザラ(ZARA)」や「H&M」が発売したランジェリーライクなキャミソールやワンピースが国内外でバズると、前述のジーユーはトレンドをローカライズしたサテンキャミソールを企画。ヴィンテージのランジェリーをインスピレーション源にしながら、アジャスター付きの肩紐やバストラインの切り替えなど、幅広い層を見越してTシャツやジャケットとの重ね着(アウター使い)を前提としたデザインに調整した。

ジーユー「サテンキャミソール」(1490円)
Image by: ジーユー

同商品のスタッフ着用画像
Image by: ジーユー
「スナイデル(SNIDEL)」でも、トレンドを受けて発売したサテン地×レースアイテムの好調は顕著だという。「レーストリムサテンキャミTOP」(1万5950円)は再入荷を繰り返し、「レーストリムプリントキャミワンピース」(2万4640円)は春の新作として1月末にオンラインで先行受注を行ったところ予約分が即完売し、追加生産を実施した。






スナイデル「レーストリムサテンキャミTOP」(1万5950円)
本家ランジェリーブランドも参入
こうしたトレンドは、本家のランジェリーブランドにも波及。ワコールの下着ブランド「ゴコチ(GOCOCi)」は昨年、“下着と洋服のボーダレス化”を狙った「クーミー(cooomy.)」を立ち上げた。コンセプトとデザイン監修に「ビームス クリエイティブ(BEAMS CREATIVE)」を迎え、ファッションとして見せるインナーに注力。担当者によると、今年4月にレイ ビームス 新宿などで行ったポップアップでは「カップ付きのランジェリーをファッションアイテムとして購入する方も多かった」とし、手応えを感じている。また、同じくワコールグループの「アンフィ(AMPHI)」でも、20代を中心にブラトップを“見せる前提”で購入する動きが以前よりも目立っているという。
イタリア発のランジェリーブランド「インティミッシミ(Intimissimi)」は、2026年秋冬シーズンで”魅せるランジェリー”領域を強化する。レースや刺繍、シルクといったセンシュアルな要素を残しつつ、ファッションアイテムとして取り入れられるようにランジェリー感を抑えたアイテムを拡充。トレンドをフックに、若年層を中心とした新客獲得を計画している。

「インティミッシミ」2026年秋冬シーズンの新作
Image by: FASHIONSNAP

「インティミッシミ」2026年秋冬シーズンの新作
Image by: FASHIONSNAP
秋冬も人気継続の兆し 抜け感もたらす新定番へ
このランジェリーコアのトレンドは、2026年秋冬シーズンも続く兆しがある。ラグジュアリーブランドのランウェイでは、2026年秋冬の主要素材にレースが浮上しており、ランジェリーライクなトップスやドレスが引き続き登場。ラグジュアリーブランドでは、そうしたランジェリーコアなアイテムに、高度なクラフトマンシップや素材選びによる付加価値を付与しているのが特徴だ。



「サンローラン」2026年ウィンター ウィメンズコレクションより
Image by: ?Launchmetrics Spotlight
加えて、レース素材のランジェリーコアアイテムは、夏の長期化という気候とも相性が良い。日本のリアルクローズブランドでも“仕込み”の動きが見られる。「マウジー(MOUSSY)」は、小花柄のサテン生地にレースを組み合わせたスリップワンピースを企画。ブランド担当者は、「レースキャミソールは、ニットやデニム、メンズライクなジャケット、ボリューミーなアウターなど幅広いアイテムと着回しできる。重たくなりがちな秋冬に取り入れると抜け感を演出できるため、長期間着用できてコストパフォーマンスが高い」とポイントを語る。「リリー ブラウン(LILY BROWN)」は、15周年企画でヴィンテージのランジェリーに着想した限定アイテムを発売予定だ。「バビロン(BABYLON)」では2025年の秋冬シーズンに最も売れたアイテムがレースキャミソールだったといい、今年も新デザインを投下する。

「マウジー」2026年秋冬シーズンの展示会より
Image by: FASHIONSNAP
かつては隠すものであったランジェリーは、今やすっかり自己表現のためのファッションアイテムになった。ランウェイからファッションビルまで広がったトレンドの波は秋冬にも波及し、着回しアイテムの新定番へと拡大していきそうだ。
最終更新日:
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